店長が知っておきたい法律とルール|労働・衛生・お店の基本

店長が知っておきたい法律を紹介する記事のアイキャッチ。バックヤードの事務机に置かれたファイルとシフト表

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店長になると、シフト、休憩、有給、衛生、防火と、法律が関わる場面が一気に増えますよね。『全部の法律なんて覚えられない…』と不安になる方も多いはずです。

結論から言うと、店長が知っておきたい法律は「働く人」「お客様」「お店」の3つに分けて、日々の場面と結びつけて覚えるのが近道です。条文を暗記するより、「この場面ではこのルールが関わる」と分かっていれば、迷った時に確かめに行けます。

この記事を読めば、店長に関わる法律の全体像と、それぞれの場面で押さえたい基本、困った時の相談先が分かります。

目次

店長に関わる法律は「働く人・お客様・お店」の3つで整理する

先に結論

店長に関わる法律は、スタッフや店長自身を守る「働く人」のルール、お客様や応募者に関わる「お客様」のルール、お店を開けて営業するための「お店」のルールの3つに分けると見通しがよくなります。

法律の名前から覚えようとすると、どうしても難しく感じます。ただ、店長の毎日の仕事に置きかえると、関わる場面はある程度決まっているんです。

例えば「シフトを組む」なら労働時間と休憩のルール、「面接をする」なら応募者の個人情報のルール、という具合です。

店長に関わる法律を働く人・お客様・お店の3つに分けた図解

日々の場面と法律の対応表

店長の仕事の場面ごとに、関わる主な法律やルールを一覧にしました。細かい中身は、このあとのセクションで紹介します。

分類店長の場面関わる主な法律・ルール
働く人スタッフを採用して契約する労働基準法(労働条件の明示)、労働契約法
働く人シフトを組む・変える労働基準法(労働時間・休憩・休日)、厚生労働省のシフト制の留意事項
働く人残業や深夜の勤務をお願いする労働基準法(36協定・割増賃金)、地域別の最低賃金
働く人有給の申し出を受ける労働基準法(年次有給休暇)
働く人高校生を雇う労働基準法(年少者の深夜業・時間外の制限)
働く人指導や注意をする労働施策総合推進法(パワハラ防止)
働く人社会保険や雇用保険の手続き社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険の加入ルール
お客様会員情報や防犯カメラを扱う個人情報保護法
お客様応募者と面接する職業安定法(応募者の情報の集め方)
お客様理不尽な要求を受ける労働施策総合推進法(カスハラ対策)
お店飲食店を開ける・営業する食品衛生法(営業許可・届出・HACCP・食品衛生責任者)
お店火災に備える消防法(防火管理者)
お店お酒を販売する酒類業組合法(酒類販売管理者)

この表は、すべての店長に全部が当てはまるわけではありません。業態やお店の規模、会社の分担によって、店長が直接関わる範囲は変わります。

補足

法律の手続きの多くは、会社の本部や人事・総務が担当していることもあります。店長が全部を一人でやる必要はないので、「どこまでが店長の仕事か」を上司に確かめておくと安心です。

働く人を守るルール|店長の労務管理で押さえたい基本

先に結論

店長の労務管理で特に関わるのは、労働条件の明示、労働時間と休憩、割増賃金、有給、社会保険です。アルバイト・パートにも、正社員と同じように労働基準法が適用されます。

『アルバイトだから、細かいルールは関係ないよね』と思われがちですが、実はそうではないんです。厚生労働省の資料でも、割増賃金は雇用形態に関わらずすべての労働者に適用されると説明されています。

採用した時は、労働条件を書面で伝える

労働基準法では、労働契約を結ぶ時に、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければならないとされています。始業・終業の時刻や休日などは、書面で明示する決まりです(本人が希望すれば電子メール等でも可)。

2024年4月からは、すべての労働契約で「就業場所・業務の変更の範囲」も明示事項に加わりました。有期契約では、更新の上限の有無と内容も明示します。

労働時間・休憩・休日の基本

ルール内容
法定労働時間1日8時間、1週間40時間を超えて働かせてはいけない
休憩6時間を超える時は少なくとも45分、8時間を超える時は少なくとも1時間を、労働時間の途中に与える
法定休日少なくとも毎週1日、または4週間を通じて4日以上の休日
時間外・休日労働36協定を結び、労働基準監督署に届け出た場合に認められる
時間外労働の上限原則として月45時間・年360時間

休憩中に電話番や来客対応を頼んでいると、その時間は休憩ではなく労働時間とみなされます。シフトの長さ別の早見表は、アルバイトの労働時間と休憩のルールで紹介しています。

シフトは一方的に決めない

厚生労働省の「シフト制」の留意事項では、使用者が一方的にシフトを決めるのは望ましくないとされています。一度確定したシフトを変えるのは労働条件の変更に当たり、双方の合意の上で行うものとされています。

例えば、急に人が足りなくなった時はこんなふうに相談してみてください。

「明日、一人お休みが出てしまって。もし可能なら、1時間だけ延長をお願いできますか。難しければ遠慮なく言ってくださいね」

割増賃金と最低賃金

働き方割増率
時間外労働25%以上
法定休日の労働35%以上
深夜(午後10時から午前5時)25%以上
月60時間を超える時間外労働50%以上(中小企業も2023年4月1日から)

最低賃金は都道府県ごとに決まっています。令和8年度の全国加重平均額は1,177円で、発効日は都道府県によって異なります。自分のお店の地域の金額は、厚生労働省の全国一覧で確かめてみてください。

有給休暇と社会保険

年次有給休暇は、雇い入れから6か月継続して働き、全労働日の8割以上出勤した人に与えられます。週の勤務日数が少ないアルバイト・パートにも、日数に応じた比例付与があります。

年10日以上の有給が付与される人には、そのうち年5日を取得させることが会社に義務付けられています。日数の決まり方はパート・アルバイトの有給休暇で表にしています。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険には、週の所定労働時間などの加入条件があります。2026年10月には、社会保険の短時間労働者の賃金要件が撤廃されました。条件の整理はパート・アルバイトの社会保険と雇用保険を見てみてください。

高校生を雇う時と、辞める時のルール

18歳未満のスタッフには、午後10時から午前5時までの深夜業は原則として禁止されています。時間外労働や休日労働も原則として認められず、年齢を証明する書面(戸籍証明書等)をお店に備え付ける決まりもあります。詳しくは高校生アルバイトを雇う時の注意点で紹介しています。

退職について、民法では期間の定めがない雇用は、申し入れから2週間で終了するとされています。会社の就業規則に退職手続きが定められている時は、それに沿って進めます。

店長の労務管理チェック
  • 採用時に、労働条件を書面で渡している
  • 準備や片付けの時間も、労働時間として記録している
  • 6時間を超えるシフトに、休憩を途中で入れている
  • 確定したシフトを変える時は、本人に相談している
  • 有給の申し出を、人手不足を理由に断っていない
  • 18歳未満のスタッフを、午後10時以降に入れていない
店長が労務管理で確かめたいことを並べたチェックリストの図解

店長自身の働き方のルール|管理職でも守られること

先に結論

会社が店長を管理職としていても、労働基準法の「管理監督者」に当たるかは、肩書ではなく実態で判断されます。管理監督者でも、深夜の割増賃金と年次有給休暇は一般の労働者と同じです。

『店長だから、何時間働いても仕方ない』と思っていませんか。スタッフの労務管理に気を配る店長ほど、自分のことは後回しにしがちですよね。

労働基準法41条では、管理監督者には労働時間・休憩・休日の規定が適用されないとされています。ただ、厚生労働省の通達では、店舗の店長が管理監督者に当たるかは、職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等の待遇を踏まえて総合的に判断するとされています。

通達で示された見方管理監督者に当たらない方向に働く例
職務内容、責任と権限アルバイト・パートの採用や解雇、人事考課、シフトの作成に実質的な権限がない
勤務態様遅刻や早退で減給などの不利益な扱いを受ける、人手不足の穴埋めで長時間労働を余儀なくされている
賃金等の待遇時間単価に直すと、店舗のアルバイト・パートの賃金に満たない
知っておきたいこと

管理監督者であっても、深夜業(22時から翌日5時まで)の割増賃金は支払う必要があり、年次有給休暇も一般の労働者と同じように与える必要があります。厚生労働省のパンフレットでは、店長が管理監督者と認められなかった裁判例も紹介されています。

自分が当てはまるかどうかを、この記事だけで判断する必要はありません。考え方は店長は管理職?管理監督者との違いと名ばかり管理職とは?で詳しく紹介しています。最終的な判断は、会社の就業規則や労働基準監督署、専門家に確かめてみてください。

お客様に関わるルール|個人情報・面接・カスハラ

先に結論

お客様や応募者の情報を扱う時は個人情報保護法、面接では職業安定法、理不尽な要求への備えでは労働施策総合推進法が関わります。どれも「お店として決めたルール」に沿って動くのが基本です。

お客様との関わりでも、店長が知っておきたいルールがあります。『個人情報って、どこまで気をつければいいの?』と迷う場面も多いですよね。

お客様の情報と防犯カメラ

個人情報保護委員会の説明では、事業者は個人情報の利用目的をできる限り特定し、公表するか本人に知らせる必要があります。漏えいなどを防ぐ管理に加えて、従業者への必要かつ適切な監督も求められています。

防犯カメラで特定の個人を識別できる画像を撮る時も、個人情報を扱うことになります。カメラが作動していることを本人が気づきにくい時は、入口などに掲示する措置が必要とされています。

面接で聞かないこと

厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、本籍・出生地、家族に関すること、宗教、支持政党などは、応募書類に書かせたり面接で尋ねたりすることが就職差別につながるおそれがあるとされています。面接で聞くことの例はアルバイト面接で店長が聞く質問例にまとめています。

カスハラへの備え

労働施策総合推進法の改正で、カスタマーハラスメントについて事業主が雇用管理上必要な措置を講じることが義務化され、令和8年10月1日から施行されています。厚生労働省の資料では、可能な限り一人で対応させない、本社・本部へ情報を共有するといった対処の例が示されています。

一方で、お客様からの意見や苦情は、本来は商品やサービスの改善につながる大事な情報とされています。スタッフを守る方法はカスハラから店とスタッフを守るにはで紹介しています。

パワハラの線引きも知っておく

店長の立場で特に気をつけたいのが、スタッフへの指導です。厚生労働省の説明では、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示や指導はパワハラに当たらないとされています。言い方の工夫はパワハラにならない指導とは?を見てみてください。

お店に関わるルール|営業許可・衛生・防火・お酒

先に結論

お店を営業するためのルールは、業態によって関わるものが違います。飲食店なら食品衛生法、収容人員が多いお店なら消防法、お酒を販売するお店なら酒類業組合法、と自分のお店に関わるものを確かめておきましょう。

お店のルールは、開店の時に会社が手続きを済ませていることが多いです。ただ、店長が担当者として名前を届け出たり、毎日の記録をつけたりする場面があるんです。

ルールどんなお店に関わるか店長が関わりやすい場面
営業許可・営業届出(食品衛生法)飲食店営業などの許可業種、許可の対象でない食品関係の営業許可の有効期間や、届出事項の変更を確かめる
食品衛生責任者(食品衛生法施行規則)許可・届出の営業を行うお店店長が講習を受けて食品衛生責任者になることがある
HACCPに沿った衛生管理(食品衛生法)原則としてすべての食品等事業者衛生管理計画に沿って、毎日の記録をつける
防火管理者(消防法)飲食店・店舗などで、建物全体の収容人員が30人以上講習を受けて防火管理者に選ばれることがある
酒類販売管理者(酒類業組合法)お酒を小売販売する販売場ごと研修を受けて選任され、税務署に届け出る
衛生管理者・衛生推進者(労働安全衛生法)常時50人以上、または10人以上50人未満の労働者を使う事業場お店の規模によって選任が必要になる

食品衛生とHACCP

HACCPに沿った衛生管理は、令和2年6月1日に施行され、1年間の経過措置を経て令和3年6月1日から本格的に始まりました。飲食店営業などの小規模な事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象で、手引書を入手し、衛生管理計画を作り、記録をつけることが求められています。

お店に関わるルールの1つとして、HACCPに沿った衛生管理の記録をつけている様子

毎日のチェックの進め方は店長の衛生管理で紹介しています。食品衛生責任者の講習については、食品衛生責任者とは?を見てみてください。

防火管理者とお酒の販売

消防法では、飲食店や店舗など不特定多数の人が出入りする建物で、建物全体の収容人員が30人以上の時に防火管理者が必要とされています。店長が講習を受けて選ばれることもあるので、防火管理者とは?で甲種・乙種の違いを確かめておきましょう。

お酒を小売販売するお店では、販売場ごとに酒類販売管理者を選任し、2週間以内に税務署へ届け出ることになっています。店内で飲食用にお酒を出すだけのお店が対象になるかは、会社や税務署に確かめてください。

よくある失敗

店長が異動した時に、食品衛生責任者や防火管理者の担当者の変更を後回しにしてしまうことです。新しいお店に着任したら、誰がどの担当者として届け出られているかを早めに確かめておきましょう。

よくある相談と、困った時の相談先

Yahoo!知恵袋には、店長の労務管理についての相談も寄せられています。テーマに合うものを3つ選び、要点をまとめてお答えしますね。

相談1:店長が休みなく毎日出勤している。労務管理として問題はないの?

本人が好きで出勤しているように見えるけれど、法律上は大丈夫なのか、というアルバイトからの相談です。

本人が望んでいても、会社には働く人の労働時間の状況を把握する義務があります。労働安全衛生法では、管理監督者も含めて、タイムカードなどの客観的な方法で労働時間の状況を把握することとされています。

店長側にも「人が足りない時間を自分で埋めたい」という事情があることが多いです。気になる時は、本人を責めるのではなく、「最近お休みは取れていますか」と声をかけてみてください。

相談2:シフト希望を「お店の状況に合わせて出して」と言われた

店長から、人が少ない曜日を外さないように希望を出してほしいと言われた、という相談です。

お店の状況を伝えて協力をお願いすること自体は、店長として自然なことです。ただ、厚生労働省の留意事項では、使用者が一方的にシフトを決めるのは望ましくないとされ、シフト作成の前に働く人の意見を聞くことが例に挙がっています。

店長の立場なら、「この曜日が足りていないので、入れる方がいたら教えてください」と、お願いの形で伝えるのがおすすめです。

相談3:数年働いているのに、有給を一度も使ったことがない

付与された有給を使わないまま時間がたってしまった、という相談です。

年10日以上の有給が付与される人には、そのうち年5日を取得させることが会社に義務付けられています。これを守らなかった場合、労働基準法では30万円以下の罰金の対象とされています。

スタッフから言い出しにくいこともあるので、店長から「有給の予定、早めに教えてくださいね」と声をかけておくと、お互いに安心です。

困った時の相談先

自分の会社のことで判断に迷った時は、まず社内の人事・総務や上司に相談します。それでも解決しない時は、公的な窓口も使えます。

窓口相談できること
総合労働相談コーナー解雇、雇止め、賃金、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど労働問題全般。労働局や労働基準監督署などに設置され、予約不要・無料
労働条件相談ほっとライン0120-811-610。時間外労働や賃金不払残業など。労働者・使用者を問わず無料、匿名でも相談できる
労働基準監督署労働時間、賃金、解雇などの労働条件、職場の安全衛生
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)職場のハラスメント、パート・契約社員の待遇

店長自身の悩みも、事業主側の相談も受け付けている窓口です。社内外の相談先は店長の悩みの相談先でもまとめています。

法律の知識は、働き方を選ぶ時の支えにもなる

労働時間や休憩のルールを知っておくと、自分の働き方を見直す時の物差しにもなります。今の働き方を続けるか迷った時は、社内の異動の相談と並べて、別の職場の話を聞いてみるのも1つの方法です。

飲食業界で働き方を見直したくなった時は、飲食店に特化した人材紹介サービスに相談してみるのもいいですよ。

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よくある質問

店長が最低限知っておきたい法律は何ですか?

働く人に関わる労働基準法(労働時間・休憩・休日・割増賃金・有給)、お客様に関わる個人情報保護法、お店に関わる食品衛生法や消防法が中心です。業態や会社の分担によって関わる範囲が変わるので、上司に確かめておくと安心です。

店長の労務管理では何をすればいいですか?

労働条件の書面での明示、労働時間の記録、休憩の取り方、シフトの相談、有給の対応、年少者の深夜業の確認などが主な内容です。手続きの多くは本部や人事が担当していることもあるので、店長の役割の範囲を確かめておきましょう。

アルバイトにも労働基準法は適用されますか?

適用されます。割増賃金は雇用形態に関わらずすべての労働者に適用されると、厚生労働省の資料でも説明されています。有給休暇も、勤務日数に応じた比例付与があります。

店長は管理職なので残業代は出ないのですか?

会社が管理職としていても、労働基準法の管理監督者に当たるかは実態で判断されます。管理監督者であっても深夜の割増賃金と有給休暇は一般の労働者と同じです。個別の判断は就業規則や労働基準監督署に確かめてください。

法律のことで迷った時はどこに相談すればいいですか?

まずは社内の人事・総務や上司に相談します。公的な窓口として、総合労働相談コーナーや労働条件相談ほっとライン、労働基準監督署があり、無料で相談できます。

まとめ

この記事の要点
  • 店長に関わる法律は「働く人」「お客様」「お店」の3つに分けて覚える
  • 店長の労務管理では、労働条件の明示・労働時間と休憩・割増賃金・有給・社会保険が中心
  • アルバイト・パートにも労働基準法は適用される
  • 管理監督者に当たるかは肩書ではなく実態で判断され、深夜割増と有給は一般の労働者と同じ
  • お客様の情報、面接、カスハラへの備えにもルールがある
  • 飲食店は食品衛生法、収容人員の多いお店は消防法など、業態に合わせて確かめる
  • 迷った時は社内の窓口と、総合労働相談コーナーなどの公的な窓口を使う
店長ドットコム

店長ドットコム 編集部

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