店長の衛生管理|HACCPに沿った衛生管理と毎日のチェック

店長の衛生管理と毎日のチェックを紹介する記事のアイキャッチ。開店前の厨房に置かれたチェック表と色分けしたまな板

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店長を任されて、『衛生管理って、どこまでやればいいの?』『HACCPと言われても、何から手をつければいいか分からない』と不安になっていませんか。毎日の営業で手一杯だと、つい後回しになりがちですよね。

結論から言うと、店長の衛生管理は「人・物・場所・記録」の4つに分けて、開店前・営業中・閉店後に何を確かめるかを決めておくと、毎日回せるようになります。 やり方の細かいところは業態や会社の決まり、業界団体の手引書で違うので、この考え方を土台に自分の店に合わせていけば大丈夫です。

この記事を読めば、HACCPに沿った衛生管理の基本と、毎日使えるチェック表の作り方が分かります。

目次

店長の衛生管理、まず知っておきたいHACCPのこと

先に結論

食品を扱うお店は、原則としてHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになっています。飲食店などの小規模な事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が対象で、手引書を使って計画と記録をつけていく形です。

HACCPは、食品を扱う工程の中で、特に気をつけるべきところを決めて管理していく衛生管理の考え方です。お店の衛生管理も、この考え方に沿って進めることが求められています。

平成30年6月に食品衛生法が改正され、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められることになりました。令和2年6月1日に施行され、1年間の経過措置を経て、令和3年6月1日から本格的に始まっています。

『うちは小さな店だから関係ないのでは』と思う方もいるかもしれません。実は、飲食店も対象に入っているんです。

お店はどちらの基準に当たる?

HACCPに沿った衛生管理には、2つの基準があります。多くの飲食店は、2つ目の「考え方を取り入れた衛生管理」に当たります。

基準主な対象店で言いかえると
HACCPに基づく衛生管理と畜場、食鳥処理場、大規模事業者(従業員50人以上)など大きな工場や処理施設
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理食品の取扱いに従事する人が50人未満の事業者、飲食店営業、喫茶店営業、その他の食品を調理する事業者、併設の店で大部分を小売販売する製造事業者など飲食店、カフェ、パン屋やケーキ屋など、多くの店

自分の店がどちらに当たるか迷った時は、本部や管轄の保健所に確かめておきましょう。

法律ではどう決まっている?

食品衛生法第51条では、2つのことについて基準を定めるとされています。施設の内外の清潔保持、ねずみや昆虫の駆除その他一般的な衛生管理と、食品衛生上の危害の発生を防ぐために特に重要な工程の管理です。営業者は、これに従って必要な措置を定め、守らなければなりません。

つまり、店の衛生管理は「掃除や虫・ねずみ対策などのふだんの管理」と「特に大事な工程の管理」の2本立てなんです。

自分の店は何をすればいい?手引書・計画・記録の3つ

やることは「手引書を手に入れる、計画を作る、記録をつける」

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理では、業界団体が作った手引書を入手し、衛生管理計画を作り、衛生管理の記録をつけていきます。ゼロから自分で考える必要はありません。

『計画書なんて作ったことがない』と身構えてしまいますよね。ただ、小規模な事業者向けには、業界団体が作った手引書があります。手引書にそって進めれば、何を書けばいいかが分かるようになっているんです。

衛生管理を始める流れ
  1. 自分の店の業態に合った、業界団体の手引書を手に入れる
  2. 手引書を見ながら、店の衛生管理計画を作る
  3. 毎日の確認項目を、チェック表に落とし込む
  4. 決めた項目を、毎日記録する
  5. 記録を見返して、うまくいっていない所を直す

チェーン店の場合は、本部が衛生管理計画や記録の様式を用意していることもあります。まずは本部の決まりを確かめて、店ではそれを毎日回すことに集中しましょう。

衛生管理計画が要らない営業もある

厚生労働省の説明では、食品を扱うお店でも、衛生管理計画等が要らない営業もあります。例えば、常温で保存できる包装された食品だけを販売する場合などです。

衛生管理計画等が不要とされている営業の例
  • 食品や添加物の輸入業
  • 貯蔵・運搬だけの営業(冷凍・冷蔵倉庫業は除く)
  • 常温で保存できる包装食品だけの販売業
  • 器具や容器包装の輸入・販売業

小売店でも、お惣菜を作ったり、冷蔵・冷凍の食品を扱ったりする場合は話が変わってきます。自分の店の扱う物で判断が必要な時は、保健所に確かめるのがおすすめです。

食品衛生責任者との関係

飲食店などの営業者は、食品衛生責任者を定めることになっています。食品衛生責任者は、営業者の指示に従って衛生管理に当たり、必要な注意をしたり、営業者に意見を述べたりするよう努める役割です。

店長が食品衛生責任者を務めることもあります。資格の取り方や講習の中身は、食品衛生責任者とは?で紹介しています。

衛生管理を「人・物・場所・記録」の4つに分ける

4つに分けると、抜けている所が見えやすい

衛生管理は項目が多く、思いつくままにやると抜けが出ます。「人・物・場所・記録」の4つに分けて考えると、店全体を見渡しやすくなります。

ここがこの記事の中心です。店の衛生管理でやることを、人・物・場所・記録の4つに分けてみました。

店の衛生管理を、人・物・場所・記録の4つに分けた図解
分け方見るもの店でやることの例
人スタッフの手洗い、身だしなみ、服装作業前の手洗い、髪をまとめる、爪を短くする、アクセサリーを外す
物食材、器具、洗剤や消毒の道具食材の保管場所と期限の確認、包丁やまな板の使い分け、器具の洗浄
場所厨房、売場、冷蔵庫、トイレ、ごみ置き場床や作業台の清掃、冷蔵庫の温度の確認、虫やねずみの見回り
記録チェック表、衛生管理計画決めた項目を毎日つける、問題があった時の対応を書く

人:手洗いと身だしなみ

衛生管理で一番大事なのは、実はスタッフ一人ひとりの動きなんです。どんなに設備を整えても、手洗いが抜けると意味がなくなってしまいます。

手洗いのタイミングは、作業を始める前、トイレの後、生の食材を触った後など、店で決めておきます。声かけは、例えばこんな形です。

手洗いの声かけの例

「仕込みに入る前に、一回手を洗っておこうか」
「ごみを捨てたあとは、手を洗ってから戻ってね」

物:食材と器具の扱い

食材は、保管する場所と、使う順番を決めておくのが基本です。先に入ったものから使う、日付を書いておく、といった店のルールを作っておきましょう。

器具は、生の食材用と、そのまま食べる物用を分けておくと、取り違えが減ります。色やシールで分けておくと、新人でも迷いません。

場所:厨房と売場、見えない所まで

掃除は、毎日やる所と、週に1回などまとめてやる所に分けると続けやすくなります。冷蔵庫の裏や棚の下など、ふだん見えない所は、日を決めて確かめましょう。

食品衛生法でも、施設の内外の清潔保持や、ねずみや昆虫の駆除が一般的な衛生管理として挙げられています。ごみ置き場や裏口のまわりも、店の衛生管理の大事な場所です。

記録:書くことで続く

記録は、ちゃんとやったことを残すためだけのものではありません。後から見返すと、どの時間帯に抜けが出やすいかが分かるんです。

記録をどれくらいの期間保管するかは、手引書や本部の決まりを確かめておきましょう。

記録には、決めた項目のほかに、いつもと違ったことも書いておくと役に立ちます。例えば、次のような書き方です。

書くこと書き方の例
確認した日時と人〇月〇日の開店前、〇〇が確認
確認した項目冷蔵庫の温度、作業台の清掃
いつもと違ったこと冷蔵庫の扉が少し開いていた
とった対応扉を閉め、中の食材を店長が確認した

開店前・営業中・閉店後のチェック表

時間帯ごとに「誰が、何を、いつ」見るかを決める

人・物・場所・記録の4つを、開店前・営業中・閉店後の時間帯に割り振ると、毎日のチェック表になります。担当者まで決めておくと、確認の抜けが減ります。

4つに分けた項目を、1日の流れに置きかえると、こんなチェック表になります。項目は店の業態に合わせて、足したり減らしたりしてみてください。

時間帯人物場所記録
開店前出勤したスタッフの手洗いと身だしなみ食材の期限と保管状態、器具の洗浄作業台・床の清掃、冷蔵庫の温度開店前の確認欄に記入
営業中作業の合間の手洗い、持ち場を変える時の手洗い器具の使い分け、出しっぱなしの食材がないかこぼれた物の拭き取り、トイレの見回り決めた時間に温度などを記入
閉店後片付けの後の手洗い残った食材の保管、器具の洗浄と乾燥床・排水口・ごみ置き場の清掃閉店後の確認欄に記入、気づいたことをメモ
開店前・営業中・閉店後に、人・物・場所・記録の4つで確かめることを並べたチェック表の図解

チェック表を作る時のコツ

『項目が多すぎて、結局つけなくなりそう』という不安もありますよね。最初から完ぺきを目指さず、少ない項目から始めるのが長続きのコツです。

チェック表を作る時に確かめること
  • 手引書や本部の決まりにある項目が入っている
  • 1つの項目に、確認する時間帯と担当者が決まっている
  • はい・いいえで答えられる書き方になっている
  • 問題があった時に、何をするかが書いてある
  • バックヤードなど、スタッフがすぐ見られる場所に置いてある

業態によって足したい項目

チェック表の土台は同じでも、業態によって重点は変わります。自分の店に近いものを参考に、項目を足してみてください。

業態足したい項目の例
居酒屋・レストランなど調理する飲食店仕込みの食材の保管、加熱した料理の扱い、洗い場の片付け
カフェ・喫茶飲み物の機械まわりの清掃、氷や牛乳など冷やす物の保管
パン屋・ケーキ屋製造の作業場と売場の行き来、ショーケースの清掃
お惣菜を作るスーパーなど調理場と売場の区分け、作った物の日付の表示

小売店の場合は、売場の担当と調理場の担当が分かれていることも多いですよね。担当ごとにチェック表を分けると、責任の範囲がはっきりします。

店長が休みの日も回る形にする

衛生管理が店長頼みになっていると、店長が休みの日に抜けが出てしまいます。『自分がいない日が心配で休めない』という方もいるはずです。

時間帯ごとの責任者を決めて、チェック表の確認を任せておきましょう。翌日に店長が記録を見て、「昨日もきちんと埋まってたね」と一言かけるだけで、任された人の意識も変わります。

問題があった時の動き方

チェックで問題が見つかった時に、どうするかも決めておきます。例えば、冷蔵庫の温度がいつもと違った時は、こんな流れです。

問題が見つかった時の流れ
  1. 見つけた人が、すぐに店長か責任者に伝える
  2. 食材が使えるかどうかを、手引書や本部の決まりで判断する
  3. 使わないと決めた食材は分けて、誤って使わないようにする
  4. 起きたことと対応を、記録に書く
  5. 必要なら本部や業者に連絡する

スタッフに衛生管理を続けてもらうには

「なぜやるか」と「やり方」をセットで伝える

衛生管理は、店長1人ではできません。スタッフが毎日続けられるよう、理由とやり方を一緒に伝え、できている所を認めることが大切です。

チェック表を作っても、スタッフに続けてもらえなければ意味がありませんよね。忙しい時ほど、手洗いや記録が抜けやすくなるものです。

続けてもらうには、「なぜやるのか」を伝えることが近道です。例えば、こんな言い方があります。

伝えたいこと言い方の例
手洗いの理由「お客様に安心して食べてもらうために、手洗いは一番大事なんだ」
記録の理由「書いておくと、何かあった時にちゃんとやっていたと分かるからね」
器具の使い分け「この色のまな板は生の肉だけ。分けておけば迷わないよ」
できていた時「今日のチェック表、全部埋まってたね。ありがとう」

衛生管理のルールは、店のマニュアルにまとめておくと新人にも伝わりやすくなります。マニュアルの作り方は店舗マニュアルの作り方で紹介しています。

よくある失敗

忙しい日にチェック表をまとめて後から記入してしまうことがあります。記録は、その時に確かめた内容を書くことに意味があります。後からまとめて書くことがないよう、記入の時間をシフトに組み込んでおきましょう。

作業を始める前に厨房の手洗い場で手を洗うスタッフの手元のイメージ写真

新人に教える順番

新人には、まず手洗いと身だしなみから教えます。次に器具の使い分け、そのあとにチェック表のつけ方、という順番だと覚えやすくなります。

『全部いっぺんに覚えてもらいたい』と思うかもしれません。でも、一度に教えるのは1つか2つにしておくと、確実に身につきます。

新人が覚えたかを確かめるポイント
  • 作業に入る前に、言われなくても手を洗っている
  • 髪をまとめ、アクセサリーを外してから持ち場に入っている
  • 器具の使い分けを、自分の言葉で説明できる
  • チェック表のどこに何を書くかが分かっている

店長の衛生管理、よくある相談

迷ったら「保健所」と「本部」に確かめる

衛生管理の相談は、食品衛生責任者の役割や講習についての迷いが多くなります。細かい決まりは地域や営業の種類で変わるので、保健所や本部に確かめるのが近道です。

知恵袋などで見かける、店の衛生管理や食品衛生責任者についての相談を3つ取り上げました。

相談1 食品衛生責任者は、いつも店にいないといけない?

『店の経営者だけれど、ふだんは店にいない。管理は店長に任せたい』という相談があります。食品衛生責任者がいつも店にいないといけないのか、迷いますよね。

法令では、営業者が食品衛生責任者を定め、食品衛生責任者は営業者の指示に従って衛生管理に当たるとされています。誰を食品衛生責任者にするか、不在の時にどうするかは、管轄の保健所に確かめておくと安心です。

店長が日々の衛生管理を任されるなら、店長自身が講習を受けて食品衛生責任者になる方法もあります。

相談2 eラーニングの講習を、仕事しながら流していい?

『食品衛生責任者の講習をeラーニングで受けることになったけれど、仕事をしながら流しておけばいいと言われた』という相談も見かけます。忙しい店では、時間をどう取るか悩みますよね。

講習は、食品衛生の知識を身につけるためのものです。許可が必要な営業の食品衛生責任者は、講習会を定期的に受けて、新しい知見を身につけるよう努めることとされています。

店長の立場なら、講習を受けるスタッフの時間をシフトで確保してあげると、身についた知識が店の衛生管理にそのまま活きます。

相談3 居酒屋の店長は、食品衛生責任者の資格を持っている?

『居酒屋の店長って、みんな食品衛生責任者なの?』という疑問もあります。お店で働いていると、気になりますよね。

飲食店営業などの営業者は食品衛生責任者を定める必要があり、店長が務めることもあります。東京都では、調理師などの資格を持たない人は、計6時間程度の養成講習会を受けることになっています。

飲食店の店長の仕事の全体は、飲食店の店長の仕事内容でも紹介しています。

衛生管理を回してきた力は、ほかの店でも活きる

毎日の衛生管理を仕組みにして回してきた経験は、飲食の現場で頼りにされる力です。もし、その力を飲食業界の別の店や会社で活かしてみたくなった時は、業界に詳しい転職支援サービスに話を聞いてみる方法もあります。

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よくある質問

小さな飲食店でも、HACCPに沿った衛生管理は必要ですか?

原則として、すべての食品等事業者が対象です。飲食店営業などの小規模な事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が対象で、業界団体の手引書を使って計画と記録をつけていきます。

衛生管理計画は、自分で一から作らないといけませんか?

一から作る必要はありません。業界団体が作った手引書を見ながら、自分の店に合わせて作っていきます。チェーン店では、本部が様式を用意していることもあります。

衛生管理の記録は、どれくらい保管すればいいですか?

保管期間は、手引書や本部の決まりを確かめてください。分からない時は、管轄の保健所に聞いておくと安心です。

衛生管理のチェックは、毎日だれがやればいいですか?

時間帯ごとに担当を決めておくのがおすすめです。店長が全部を確かめるのではなく、担当者がチェック表に記入し、店長はその記録を見て声をかける形にすると、店長が休みの日も回ります。

店長が食品衛生責任者にならないといけませんか?

食品衛生責任者を誰にするかは、営業者が決めます。店長が務めることもありますが、店や会社によって違うので、本部や上司に確かめておきましょう。

まとめ

この記事の要点
  • 食品を扱うお店は、原則としてHACCPに沿った衛生管理に取り組む
  • 飲食店などは、手引書を入手し、衛生管理計画を作り、記録をつける
  • 衛生管理は「人・物・場所・記録」の4つに分けて考える
  • 開店前・営業中・閉店後のチェック表にして、担当と時間を決める
  • スタッフには「なぜやるか」とやり方をセットで伝える
店長ドットコム

店長ドットコム 編集部

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