カスハラから店とスタッフを守るには|店長が知っておきたい対策

カスハラから店とスタッフを守るための店長の備えを紹介する記事のアイキャッチ。バックヤードに貼られた連絡先と記録用ノート

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お客様に大きな声で責められているスタッフを見て、『どこまで我慢させればいいの?』と迷ったことはありませんか。店長自身が理不尽に怒られる場面もあって、気持ちが重くなりますよね。

結論から言うと、カスハラへの備えは「決めておく、その場で、あとで」の3つに分けて準備すると、店長1人で抱えずに済みます。 細かい対応は会社の方針で決まるので、その方針を店の中で動く形にしておくのが店長の役目です。

この記事を読めば、カスハラの考え方と、店でそろえておきたい物まで分かります。

目次

カスハラとは?店長が知っておきたい定義と義務化

先に結論

カスハラは、お客様の言動のうち、社会通念上許される範囲を超えて、働く人の環境を害するものです。令和8年10月1日から、事業主にカスハラ対策の措置が義務づけられています。

カスハラはカスタマーハラスメントの略です。厚生労働省のマニュアルでは、次の3つをすべて満たすものとされています。

要素中身店で言いかえると
1顧客等の言動であるお客様や取引先など、店の外の人からの言葉や行動
2業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えている要求や言い方が、普通に考えて度を超えている
3労働者の就業環境が害されるスタッフが安心して働けなくなる

店頭だけでなく、電話やSNS等でのものも含まれます。お店にかかってくる電話や、SNSへの書き込みのような場面も入るんです。

令和8年10月1日から、事業主の義務に

令和7年6月に労働施策総合推進法が改正され、カスハラについて事業主が雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されました。施行は令和8年10月1日です。

業種や業態を問わず、すべての事業主が取り組む必要があるとされています。飲食店でも小売店でも、店の規模にかかわらず関係する話なんです。

どのくらいの職場で起きている?

厚生労働省の令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査では、顧客等からの著しい迷惑行為について、従業員から相談があった企業は27.9%でした。労働者のうち、一度以上経験した人は10.8%です。

『うちの店だけが特別なのでは』と思う方もいるかもしれません。ただ、こうした数字を見ると、多くの職場で起きうることだと分かりますよね。

クレームとカスハラの境目はどこ?

お客様の声そのものは、大事な情報

厚生労働省も、顧客等からの意見や苦情は本来、商品やサービス、接遇等の改善につながる重要な情報で、一律に問題視すべきものではないとしています。境目は、要求の中身と、その伝え方です。

『強く言われたら全部カスハラ?』と思うと、お客様の声を聞くのが怖くなってしまいますよね。でも、怒っているお客様がみんなカスハラというわけではありません。

厚生労働省が挙げている「社会通念上許容される範囲を超える言動」の例を、店の場面にあてはめてみました。

厚生労働省が挙げる例店で起きうる場面
要求に理由がない、サービスを著しく超える要求落ち度がないのに、全額の返金や追加のサービスを求められる
不当な損害賠償の要求店と関係のない損害まで、店に払うよう求められる
精神的な攻撃(暴言、侮辱、土下座の強要など)スタッフを大声でののしる、土下座をしろと言う
威圧的な言動カウンターをたたく、にらみつけて詰め寄る
継続的・執拗な言動同じ苦情の電話が何度も続く
拘束的な言動(不退去、居座りなど)閉店後も帰らず、長時間スタッフを引き止める
お客様の声のうち、改善につながる意見とカスハラに当たる言動の境目を示した図解

通常のクレームへの応じ方は、店長のクレーム対応で段階ごとの例文と一緒に紹介しています。

カスハラへの備えは「決めておく・その場で・あとで」の3つ

3つの場面に分けて、店の準備をそろえる

事前に決めておくこと、その場でやること、あとでやることの3つに分けると、何が足りないかが見えやすくなります。会社の方針を土台に、店の実情に合わせて決めていきましょう。

ここがこの記事の中心です。厚生労働省が示す事業主の措置には、方針の明確化や周知、あらかじめ定めた対処の内容の周知、相談窓口、事後の対応などがあります。これを店長目線で3つの場面に分けました。

カスハラへの備えを、決めておく・その場で・あとでの3つの場面に分けた図解

決めておく:誰が出るか、どこで線を引くか

いざという時に慌てないよう、先に決めておくことです。会社の方針がある場合は、それを店の言葉に直してスタッフに伝えます。

店でそろえておきたい物
  • 会社のカスハラ対策の方針を、スタッフが読める場所に置いた
  • 時間帯ごとに、誰が責任者として対応するかを決めた
  • 「こういう時は店長を呼ぶ」という目安を共有した
  • 本部や警察への連絡先を、レジまわりやバックヤードに貼った
  • 対応の記録を書く用紙やノートを用意した
  • スタッフが相談できる社内の窓口を伝えた

その場で:1人で対応させない

カスハラかもしれないと感じたら、その場では「1人にしない」が一番大事なところです。厚生労働省のリーフレットでも、対処の例として、管理監督者に指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、が挙げられています。

その場でやること
  1. 対応しているスタッフのそばに行き、店長か責任者が代わる
  2. 2人以上で対応し、ほかのスタッフにはふだんの仕事に戻ってもらう
  3. 話の中身と時間をメモしておく
  4. 度を超えていれば、本部に連絡して指示を仰ぐ
  5. 犯罪に当たりうる言動があれば、警察に通報する

代わる時の言い方は、例えばこんな形です。

「お待たせいたしました。責任者の〇〇です。ここからは私がお話を伺います」

スタッフには「ありがとう、あとは任せてね」と小さく声をかけて、その場から離れてもらいましょう。

場面別の言い方の例

度を超えた言動に対しては、感情的に言い返さず、店としてできることとできないことを落ち着いて伝えます。場面ごとの言い方を、例としてまとめました。

場面言い方の例
理由のない要求が続く「申し訳ございませんが、そのご要望にはお応えいたしかねます」
土下座を求められる「お詫びの気持ちは変わりませんが、そのような形でのお詫びはいたしかねます」
閉店後も帰っていただけない「本日の営業は終了しております。続きは本部からご連絡させていただきます」
同じ内容の電話が何度も続く「この件は本部で対応いたしますので、本部の窓口からご連絡いたします」

『こんなふうに断っていいの?』と不安になる方もいますよね。言い方の線引きは会社の方針で決まるので、使う言葉は本部と確かめておくと安心です。

あとで:記録と共有、スタッフへの声かけ

落ち着いたら、記録を残し、本社や本部に共有します。厚生労働省のリーフレットでも、本社や本部への情報共有が対処の例に入っています。

よくある失敗

「よくあることだから」と記録を残さずに終わらせてしまうことがあります。同じお客様からまた連絡があった時に、記録がないと本部も判断しにくくなります。

そして、対応したスタッフへの声かけも忘れないようにしましょう。「怖かったよね。対応してくれてありがとう」と伝えるだけで、スタッフの気持ちはずいぶん違ってきます。

店長が理不尽に怒られる時、1人で抱えないために

店長も「守られる側」の1人

店長はスタッフを守る立場ですが、店長自身もお客様から理不尽に怒られることがあります。店長も会社の相談窓口を使ってよいですし、本部に助けを求めてかまいません。

責任者として前に出る分、店長が理不尽に怒られる場面は多いものです。『店長なんだから、自分が我慢すればいい』と思っていませんか。

その気持ちは責任感の表れです。ただ、店長が1人で受け止め続けると、店全体の対応も続かなくなってしまいます。

困っていること相談先の例
店での対応の仕方を決めてほしい本部、上司、会社のカスハラの相談窓口
危険を感じる言動がある警察
会社に相談しても対応してもらえない総合労働相談コーナー、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

総合労働相談コーナーは、全国の都道府県労働局や労働基準監督署内などにあり、予約不要・無料で相談できます。労働者からも事業主からも相談できるので、店長の立場でも使えますよ。

スタッフから見て「店長が理不尽」と感じる時は

一方で、『バイト先の店長に理不尽に怒られる』と悩むスタッフもいます。お客様への対応で張りつめた後は、店長も言葉がきつくなってしまうことがあるんです。

ただ、指導の言い方には気をつけたい線があります。店長がスタッフに伝える時の言葉は、パワハラにならない指導とは?で例を挙げて紹介しています。

カスハラについてよくある相談

「出る人を決める」と「1人にしない」が答えの軸

相談の多くは、誰が前に出るか、どこまで付き合うかの迷いです。会社の方針と店のルールを先に決めておけば、迷う場面はぐっと減ります。

知恵袋などで見かける、カスハラや理不尽なお客様についての相談を3つ取り上げました。

相談1 「責任者を出せ」と言われ、店長が出てくれない

スタッフの側から、『理不尽なお客様に「責任者を出せ」と言われたのに、店長や副店長が前に出てくれない』という相談があります。前に立たされ続けるのは、本当に心細いですよね。

店長の側にも、売場や厨房を離れられない事情があることはあります。それでも、責任者を求められた時に誰が出るかは、先に決めておきたいところです。

スタッフの立場なら「次に同じことがあったら、誰を呼べばいいですか」と店長に聞いてみてください。聞かれることで、店長も決まりを作るきっかけになります。

相談2 クレーム対応に出ない店長、どう考えればいい?

長く働くパートの方から、『カスハラのようなクレームの時、店長が出てこない』という声もあります。慣れている人ほど任されやすく、負担が偏りがちなんです。

店長としては、ベテランを頼りにしている気持ちがあるのかもしれません。ただ、度を超えた言動を1人で受けさせないことは、会社の対応としても求められていることです。

相談3 理不尽に怒られて、もう辞めたい

アルバイトの方から、『店長に理不尽に怒られて、始めたばかりなのに辞めたい』という相談も見かけます。怒られた理由が分からないと、行きづらくなりますよね。

まずは、何について注意されたのかを落ち着いて確かめてみてください。言い方がつらい時は、ほかの社員や本部の相談窓口に話してみる方法もあります。

店とスタッフを守ってきた経験は、次の場所でも活きる

スタッフを守る仕組みを作り、お客様と向き合ってきた経験は、店長として大きな力です。もし、その力を飲食業界の別の店や会社で活かしてみたくなった時は、業界に詳しい転職支援サービスに話を聞いてみる方法もあります。

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よくある質問

カスハラとクレームはどう違いますか?

お客様の意見や苦情そのものは、店の改善につながる大事な情報です。要求に理由がない、暴言や威圧、居座りなど、社会通念上許される範囲を超えて働く人の環境を害するものがカスハラに当たります。

カスハラ対策は、小さな店でも必要ですか?

厚生労働省は、業種や業態を問わずすべての事業主が取り組む必要があるとしています。令和8年10月1日から措置が義務化されているので、会社の方針を確かめておきましょう。

店長が理不尽に怒られた時、誰に相談できますか?

まずは本部や上司、会社のカスハラの相談窓口に伝えましょう。会社で対応してもらえない時は、総合労働相談コーナーや都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にも相談できます。

カスハラの対応を記録する時は、何を書けばいいですか?

日時、場所、お客様の言動、対応した人、その場でとった対応を書いておきましょう。分かったことと、まだ分からないことを分けて書くと、本部に共有した時に判断しやすくなります。

その場で警察を呼んでもいいのですか?

厚生労働省が示す対処の例にも、犯罪に該当しうる言動は警察へ通報することが入っています。身の危険を感じる時は、ためらわずに通報してかまいません。

まとめ

この記事の要点
  • カスハラは、お客様の言動のうち、社会通念上許される範囲を超えて働く人の環境を害するもの
  • 令和8年10月1日から、事業主にカスハラ対策の措置が義務づけられている
  • 備えは「決めておく、その場で、あとで」の3つに分けて準備する
  • その場では1人で対応させず、記録を残して本部に共有する
  • 店長自身が理不尽に怒られた時も、本部や公的な窓口に相談してよい
店長ドットコム

店長ドットコム 編集部

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