店長経験を活かして独立・開業するには|準備と手続きの流れ

店長経験を活かした独立・開業の準備と手続きを解説する記事のアイキャッチ。開店準備中のカウンターに置かれた図面と書類

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店長として店を任されているうちに、『いつか自分の店を持ちたい』と考えるようになった方も多いはずです。ただ、何から始めればいいのか分からず、気持ちだけが先に進んでしまいますよね。

結論から言うと、店長の独立は経験・資金・場所・手続き・開店後の5段階に分けて、今の店にいるうちに準備を始めるのが近道です。店長の毎日の仕事には、独立してから役立つ練習がたくさん詰まっているんです。

この記事を読めば、店長時代にやっておくことと、開業までの手続きの流れが分かります。

目次

店長の独立とは?雇われ店長とオーナーの違いから考える

先に結論

店長が独立するというのは、雇われて店を任される立場から、自分で店を持つ立場に変わることです。店の運営は同じでも、お金と責任の範囲が大きく変わります。

店長と店主は、言葉は似ていても立場が違います。辞書では、店長は「その店の最高責任者」、店主は「店の主人。商店のあるじ」と説明されています。

雇われ店長は、会社やオーナーから店を任されている人です。独立すると、店のあるじとして、店を始めるか閉じるかまで自分で決めることになります。

雇われ店長のうちに任されていること
  • 売場や厨房を回し、スタッフをまとめる
  • 決められた予算の中で売上と費用を見る
  • 本部や上司に相談しながら手を打つ
  • 店の場所やメニューの大枠は会社が決める
独立すると新しく増えること
  • 店の場所・内装・メニューを自分で決める
  • 開業のお金を用意し、返していく
  • 保健所・消防・税務署の手続きを自分でする
  • 困った時に最後に決めるのは自分になる

立場の違いは、店長と店主・オーナーの違いで詳しく紹介しています。

国の職業分類でも「店主・店長」は同じ欄にある

総務省の日本標準職業分類では、「飲食店主・店長」や「小売店主・店長」がひとつの区分にまとめられています。店主も店長も、店を経営管理しながら仕入れや接客をする仕事として扱われているんです。

ただ、飲食店主が自分で調理もする場合は、調理の仕事の区分に入ります。『自分は厨房に立つ店主になるのか、店全体を見る店主になるのか』を考えておくと、店の形も決めやすくなりますよ。

『自分に独立は向いている?』と迷ったら

独立に向いているかどうかは、性格だけでは決まりません。今の店長の仕事の中で、どこまで自分で決めてきたかを振り返ってみると見えてきます。

独立の前に振り返りたいこと
  • 店の数字を見て、自分で打つ手を決めたことがある
  • 仕入れ先や業者と、自分でやり取りしたことがある
  • スタッフの採用から育成まで、一通り経験した
  • 売上が落ちた時期を、工夫して乗り切ったことがある
  • 家族や身近な人に、独立の考えを話せている

全部そろっていなくても大丈夫です。足りないところは、店長でいるうちに経験を積んでいけばいいんです。

独立までの5段階:店長時代にやっておくこと

先に結論

独立の準備は「経験」「資金」「場所」「手続き」「開店後」の5段階に分けると整理しやすくなります。それぞれに、店長のうちから始められることがあります。

『独立って、お金をためてから考えればいいのでは?』と思う方もいますよね。実は、お金以外の準備のほうが時間がかかることも多いんです。

この記事では、独立までを5つの段階に分けて、店長時代にやっておくことを表にしました。

段階考えること店長時代にやっておくこと
1 経験どんな店を、誰に向けて開くか今の店でお客様の好みや売れる時間帯を記録しておく
2 資金開業と開店後のお金をどう用意するか店の売上・原価・人件費の関係を、自分で計算できるようにする
3 場所どこに、どんな広さの店を開くか休みの日に気になる地域を歩き、人の流れを見ておく
4 手続き保健所・消防・税務署に何を出すか食品衛生責任者や防火管理者など、店で必要な役目を知っておく
5 開店後スタッフ・集客・数字をどう回すか採用・教育・シフトづくりを、自分の手で一通りやってみる
店長の独立までを経験・資金・場所・手続き・開店後の5段階に分け、店長時代にやっておくことを示した図解

1 経験:今の店が一番の練習場所

独立した店で一番困るのは、『お客様が来てくれるか分からない』ことです。だからこそ、今の店でお客様の動きを見ておく経験が役に立ちます。

例えば、雨の日にどのメニューが売れるか、平日の昼と夜で客層がどう違うか。毎日の営業でメモしておくだけで、自分の店を考える時の手がかりになりますよ。

2 資金:数字を自分の言葉で説明できるか

開業のお金を借りる時は、事業計画を説明することになります。店長として売上や費用の数字を見てきた経験は、ここで大きな助けになるんです。

『売上が上がったのはなぜ?』『人件費が増えた月は何があった?』。こうした問いに自分の言葉で答えられるか、今のうちに試してみてください。

3 場所:歩いて確かめる

店の場所は、あとから簡単には変えられません。気になる地域があれば、時間帯や曜日を変えて何度か歩いてみましょう。

近くにどんな店があるか、どの時間に人が多いか。今の店で「店の外の様子」を見るクセをつけておくと、場所選びの目が育ちます。

4 手続き・5 開店後:今の店の「誰が何をしているか」を知る

今の店では、食品衛生責任者や防火管理者を誰が担っているでしょうか。独立すると、こうした役目を自分で決めて届け出ることになります。

開店後のスタッフ集めや教育も、会社の仕組みに頼れません。採用の面接やシフトづくりを、店長のうちに一通り自分でやっておくと安心ですよ。

開業資金の準備:日本政策金融公庫の創業融資を知っておく

先に結論

開業のお金は、自分でためたお金に加えて、日本政策金融公庫などの創業融資を検討するのが一般的です。借りるには審査があり、事業計画をしっかり説明できることが大切です。

『独立にはいくら必要なの?』という疑問は、とても多いですよね。結論から言うと、店の広さ・業態・内装・場所でまったく違うため、一律の金額はありません。

だからこそ、自分の店の計画を立てて、必要なお金を一つずつ積み上げることが大事なんです。

新規開業・スタートアップ支援資金とは

日本政策金融公庫には、「新規開業・スタートアップ支援資金」という制度があります。新たに事業を始める方や、事業を始めておおむね7年以内の方が対象です。

項目公式に書かれている内容
使いみち新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金と運転資金
融資限度額7,200万円
返済期間設備資金は20年以内、運転資金は10年以内(どちらも据置期間5年以内)
利率基準利率。要件によって特別利率あり
担保・保証人希望を聞きながら相談

出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」

限度額はあくまで上限です。審査があり、事業計画の内容によって借りられる額は変わります。

よくある失敗

開店までのお金だけを考えて、開店後の運転資金を見落としてしまうことがあります。お客様が定着するまでの家賃や人件費、仕入れのお金も計画に入れておきましょう。

利率は変わることがあるので、最新の値は公庫の公式ページで確かめてみてください。

事業計画には何を書く?

融資の相談では、どんな店を、どこで、誰に向けて開くのかを説明します。ここで、店長として見てきた数字の経験がそのまま活きてきます。

事業計画を考える順番の例
  1. どんな店を開きたいか、ひと言で書いてみる
  2. 来てほしいお客様と、その人が来る時間帯を考える
  3. 1日に何人来てもらえそうか、今の店の経験から考える
  4. 売上・仕入れ・人件費・家賃の関係を表にする
  5. 開店前に必要なお金と、開店後の運転資金を分けて書く

『数字の計画なんて書いたことがない』と不安な方も、今の店の売上表を読み解く練習から始めれば大丈夫です。

開業の手続きの流れ:保健所・消防・税務署

先に結論

飲食店を開くなら、保健所の営業許可、消防への届出、税務署への開業届が大きな手続きです。地域ごとに細かい決まりが違うので、早めに窓口へ相談しておきましょう。

手続きと聞くと、身構えてしまいますよね。ただ、何をどこに出すかを先に一覧にしておけば、一つずつ進められます。

窓口主な手続き時期の目安
保健所飲食店営業の許可申請(食品衛生法第55条)内装の工事を始める前から相談しておく
保健所食品衛生責任者を決める許可申請までに
消防署防火対象物使用開始届出書使用を始める日の7日前まで(東京消防庁の例)
消防署内装工事の工事等計画届出書工事に着手する日の7日前まで(東京消防庁の例)
消防署防火管理者の選任(必要な建物の場合)店を使い始めるまでに
税務署個人事業の開業届出開業した年分の確定申告期限まで
税務署青色申告承認申請(青色申告をする場合)開業日から2月以内など(下で説明)
飲食店の開業に向けて保健所・消防署・税務署に出す主な手続きを順番に示した図解

保健所:営業許可と食品衛生責任者

飲食店を営むには、都道府県知事の許可を受ける必要があります(食品衛生法第55条)。窓口は保健所で、窓口申請のほか電子申請ができる地域もあります。

許可には有効期間があり、法律では「5年を下らない有効期間」を付けられるとされています。施設の移転や営業者の変更がある時も、事前に保健所へ相談しておきましょう。

店には、衛生管理の中心になる食品衛生責任者を置くことになります。調理師や栄養士などの資格がない人は、都道府県などが行う講習会を受けてなります。

食品衛生責任者の講習の例

東京都では、資格を持たない人は計6時間程度の養成講習会を受けます。東京都食品衛生協会の講習会の受講料は12,000円(受講料10,000円と教材費等2,000円)です。金額や日程は都道府県ごとに違います。

講習の中身は食品衛生責任者とは?で詳しく紹介しています。

HACCPに沿った衛生管理も始まりから

令和3年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています。飲食店営業は、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象です。

やることは、業界団体の手引書を手に入れて、衛生管理計画を作り、記録をつけることです。今の店で毎日つけている衛生チェックの記録が、そのまま練習になっていますよ。

開店前の厨房で衛生管理の記録表を確かめる手元の写真。HACCPに沿った記録づけのイメージ

『記録なんて会社のフォーマットに書いているだけ』という方も、一度その中身を見直してみてください。何を、いつ、誰が確かめているかが分かれば、自分の店の衛生管理計画を作る時の土台になります。

今の店で確かめておきたい衛生の記録
  • 冷蔵庫・冷凍庫の温度を、いつ誰が記録しているか
  • 手洗いや器具の洗浄のルールがどこに書いてあるか
  • 食材を受け取った時に何を確かめているか
  • 記録に抜けがあった時、誰がどう直しているか

消防署:使用開始の届出と防火管理者

東京消防庁の例では、店を出したりテナントに入ったりする時、使用を始める日の7日前までに防火対象物使用開始届出書を出します。内装を変える工事も、着手の7日前までに届け出ます。

飲食店や店舗が入る建物で、建物全体の収容人員が30人以上なら、防火管理者を選ぶ必要があります。防火管理者が必要な建物では、建物の持ち主とすべてのテナントで選任が必要です。

防火管理者の資格は、講習を修了して取るのが一般的です。甲種は2日間、乙種は1日の講習です。くわしくは防火管理者とは?を参考にしてみてください。

地域によって決まりが違います

火災予防条例は市町村ごとに定められています。届出の期限や様式は、店のある地域の消防署で確かめておきましょう。

税務署:開業届と青色申告

個人で店を始めたら、税務署に個人事業の開業届出を出します。国税庁の案内では、事業を始めた年分の確定申告期限までに出すことになっています。

青色申告をしたい場合は、承認申請書も出します。原則はその年の3月15日まで、1月16日以後に事業を始めた時は、始めた日から2月以内です。

人を雇う時やお酒を出す時は別の手続きも

スタッフを雇う時や、深夜にお酒を出す時などは、ここで紹介した以外の手続きが必要になることがあります。開業する地域の窓口や専門家に、早めに確かめておくと安心です。

開店後に店長経験が活きる場面と、迷った時の選び方

先に結論

開店後のスタッフ育成・シフト・数字の管理は、店長時代の経験がそのまま活きる場面です。一方で、独立だけが店長経験を活かす道ではありません。

開店してからの毎日は、店長の仕事とよく似ています。違うのは、困った時に相談できる本部や上司がいないことなんです。

開店後の場面店長時代の経験が活きること独立して新しく増えること
スタッフ集め面接で見るポイントが分かっている求人の出し方や条件も自分で決める
教育新人に教える順番が分かっている店のルールやマニュアルを一から作る
数字の管理毎日の売上や原価の見方が分かっている資金繰りや返済も自分で見る
お客様対応呼ばれた時の対応に慣れている店の方針を最後に決めるのは自分
休みシフトの組み方が分かっている自分の休みも自分でつくる

マニュアルづくりの経験がない方は、店長のうちに店舗マニュアルの作り方を試してみるのもおすすめです。

独立前の『あと一歩』を、ほかの店で積む選択肢

『独立したいけど、今の店では仕入れやメニューづくりを任されていない』という方もいますよね。そんな時は、独立の前に経験の幅を広げられる職場へ移るのも一つの方法です。

例えば、個人店の店長として店全体を任される働き方なら、仕入れや業者とのやり取りまで経験できることがあります。飲食業界で次の職場を考えるなら、業界に詳しい相談先で話を聞いてみるのもいいですよ。

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もちろん、今の会社でSVや本部の仕事に進む道もあります。店長の先にある道は、店長のキャリアパスでまとめています。

『独立か、会社に残るか』の二択で考えなくても大丈夫です。今の自分に足りない経験を、どこで積むのが一番いいかを考えてみてください。

よくある相談:店長の独立について

店長の独立や、店長とオーナーの違いについて、よく寄せられる相談を要約してお答えします。

相談1:経営者と店長とオーナーの違いは?

『経営者・店長・オーナーって、何が違うの?』という相談です。

ざっくり言うと、オーナーは店の持ち主、店長は店の運営を任された責任者です。個人のお店では、オーナーが店長を兼ねて、経営者として店に立っていることもあります。

独立するということは、この3つの役目を自分ひとりで持つことでもあるんです。

相談2:オーナーは普段お店に出ているの?

『オーナーって、毎日お店にいるの?どんな仕事をしているの?』という相談です。

これは店によってさまざまです。自分で厨房やレジに立つオーナーもいれば、店長に現場を任せて、お金や仕入れの判断を中心にするオーナーもいます。

独立を考えるなら、『自分は現場に立ち続けたいのか、任せる側になりたいのか』を先に考えておくと、店の大きさや人数も決めやすくなりますよ。

相談3:開いたばかりの店でスタッフが続かない

オープンしたばかりの店の店長をしていて、アルバイトが辞めていってしまう、という相談です。

開店直後は、仕事の流れが固まっていなくて、スタッフも戸惑いやすい時期です。店長側も手いっぱいで、一人ひとりに声をかける余裕がなくなりがちですよね。

開店直後に整えたいこと
  • 新人が最初の1週間で覚えることを紙にまとめる
  • ピークの時間帯の役割分担を決めておく
  • 毎日の終わりに、困ったことを聞く時間を数分つくる
  • シフトの希望を早めに集めて、無理な連勤を避ける

これは独立して自分の店を開いた時も同じです。辞めない店づくりはスタッフが辞めない店の作り方も参考にしてみてください。

よくある質問

店長経験があれば独立できますか?

店長経験は、店の運営・スタッフ育成・数字の管理で大きな強みになります。ただ、資金の準備や場所選び、手続きは店長の仕事にはあまり含まれないので、別に準備が必要です。

独立に必要な資格はありますか?

飲食店なら、店ごとに食品衛生責任者を置くことになります。建物の収容人員によっては防火管理者も必要です。どちらも講習を受けて取ることができます。

開業届はいつまでに出せばいいですか?

国税庁の案内では、事業を始めた年分の確定申告期限までに出すことになっています。青色申告をしたい場合は、承認申請の期限が別にあるので早めに確かめておきましょう。

開業資金はすべて自己資金でないとだめですか?

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金など、創業向けの融資制度があります。審査があるので希望どおりに借りられるとは限りません。事業計画をしっかり準備して相談しましょう。

独立の前に転職して経験を積むのはありですか?

ありです。仕入れやメニューづくりなど、今の職場で経験できないことを別の店で積む人もいます。独立までに足りない経験を書き出して、どこで積めるかを考えてみてください。

まとめ

この記事の要点
  • 店長の独立は、経験・資金・場所・手続き・開店後の5段階で準備する
  • 今の店でのお客様の観察や数字の管理が、そのまま独立の練習になる
  • 開業資金は、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金などを検討する
  • 飲食店なら、保健所の営業許可・食品衛生責任者・消防の届出・開業届が主な手続き
  • 独立だけでなく、経験を積むための転職や社内の道も選択肢になる
店長ドットコム

店長ドットコム 編集部

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